今後の景気見通しと日銀新体制
【日 時】 202 3 年 5 月 19 日 金 午後 1 時 30 分 3 時
【会 場】 ロイヤルホールヨコハマ 4 階「 エリゼ 」
【講 師】 第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト 熊 野 英 生 氏
神奈川政経懇話会は19日、5月定例講演会を横浜市中区のロイヤルホールヨコハマで開催した。「今後の景気見通しと日銀新体制」と題し、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏が講演。「狭い分野の市場でトップを取り、世界で躍進するグローバル・ニッチ・トップ戦略を取ることなどが今後の活路になる」と解説した。
熊野氏は景気の現状について、製造業の悪化を訪日外国人客(インバウンド)などによる非製造業の改善が支えていると説明した。今春、約30年ぶりといわれる高水準の賃上げが行われ「消費増↓企業の収益増↓賃上げ」という好循環が起きる可能性が期待できるとしつつ、「賃上げが消費増につながるには、賃金の上昇が続くと思えることが必要」と指摘。「企業が賃金を上げ続けるには収益増が予想される必要がある」とした。
熊野氏は「利益を上積みしやすい輸出を増やすことが重要」とし、輸出額が高いドイツは平均賃金も高く見習うべきだとした。中小企業でも、高品質な日本酒やウイスキー、農産物などの輸出が成功した例を挙げ、グローバル・ニッチ・トップ戦略の有効性を強調した。新型コロナウイルス禍で訪日できない中国人がインターネットで(かつて来日時に買った)日本商品を購入し、その金額はコロナ禍前の訪日消費1兆8千億円を上回っているという。「インバウンドは世界に需要を増やす入り口になる」とし、訪日観光の再開というチャンスの活用を指南した。
くまの・ひでお 横浜国大卒。1990年日本銀行入行、調査統計局、情報サービス局を経て、2000年に第一生命経済研究所入社。11年4月より現職。専門は、金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会理事。著書に「本当はどうなの? 日本経済―俗説を覆す64 の視点」 (日本経済新聞出版社) 、「なぜ日本の会社は生産性が低いのか?」 (文藝春秋)など。