▽はじめに
欧米では、利上げの影響で2024年前半にかけて景気の減速が続くと予想されており、年央ごろに連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)などが利下げに転じれば、後退局面は避けられ、景気も上向くといわれています。日本と関係が深い中国経済は住宅市況の低迷から脱却できるかが大きなポイントで、習近平政権がどう経済を立て直すかが注目されています。
国内経済に目を向けると、消費者物価はピークアウトに向かい、24年の個人消費は回復すると予想。春闘で実質賃金がどのくらい上げられるかがポイントになり、これにより賃上げと物価上昇の好循環への道筋がつけば、日銀がゼロ金利政策を見直すとみられます。タイミングよく政策が進めば、国内景気も後退局面に陥ることはなく、24年度も緩やかな回復が続き、後半には成長率はやや高まると期待されています。
24年度は、生成AI(人工知能)などの新技術、運輸や建設の2024年問題などで、社会構造の変化やさらなる技術革新なども進むと予想されています。
政局では、9月の自民党総裁選に向け、衆院解散、総選挙がいつ行われるのかが焦点です。少子化対策の財源や防衛増税の行方も気になるところですが、ポスト岸田の動きも見逃せません。県内では小田原、綾瀬、伊勢原、座間の市長選も行われます。海外では、米ロ大統領選など注目の選挙も行われます。
健康保険証の廃止、新紙幣の発行のほか、パリ五輪・パラリンピックもあり、日本選手団の活躍にも期待したい年です。ただ、北朝鮮の核開発や長引くウクライナ戦争、中東・ガザ地区の戦闘など不安要素もあります。
こういう難しい時代だからこそ、神奈川政経懇話会では会員のご期待に応えるべく、タイムリーで的確な情報を「目で伝える」会報や、「耳で伝える」講演会、「体で感じる」視察事業などを通じてお届けしていきます。また、これからも会員の皆様の声に耳を傾け、ご満足いただけるよう事業内容の改善にも努めてまいります。
会員あっての当会は、2024年度も神奈川新聞社との連携をさらに強化し、会員の皆さまが「入っていて良かった」と思える、魅力ある事業展開、組織運営に注力してまいります。会費で運営される当会にとって会員数の増強は組織運営の基盤強化につながり、さらに事業の充実を図る上で重要となります。このため、神奈川新聞社の協力の下、引き続き会員数の増強に力を入れております。
2023年度の事業実施は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられたことから、感染対策に留意しながら、会員が出席するリアル方式での定例会(講演会・見学会)を12回実施(2・3月開催予定含む)できました。 ただ、施設見学と講演会を計画していた8月の定例会が1週間前に延期となり、結局は中止となったほか、講師の急な変更等もあり、会員の皆さまにはご迷惑をおかけしました。24年度からは、講演会等の予定をなるべく早くお知らせするとともに変更が発生しないよう最大の注意を払って運営してまいります。またユーチューブによる動画配信(後日に期間限定)も併用し、会場にいらっしゃれなくとも講演をお聞きできるように努めます。
▽定例講演会の開催
神奈川政経懇話会の事業の軸は、幅広い分野から講師を招いて毎月開催する定例講演会です。
【2023年度】
詳しくは5月開催の決算理事会での報告になりますが、3月までに講演会を12回開催。県内の老舗トップ3人による「暖簾をつなぐ」シンポジウム、12年ぶり登壇の黒岩祐治知事、世界最大級の音楽アリーナを運営するKアリーナマネジメントの田村剛社長らに講演していただきました。3月4日は、ウエインズトヨタ神奈川社長の宮原漢二社長に、W杯で人気急上昇のプロバスケットボール事業についてお話しを伺う予定です。
【2024年度】
月1回講演会を開催し、ユーチューブによる動画(後日・期間限定)配信も可能な限り併用していきます。3年前にコロナで中止となったファンケル創業者の池森賢二氏に4月に登壇していただくなど、地元首長や政治家、国内外で活躍する経済人など神奈川ならではの講師を軸に招く方針です。一方で時宜を得た、評論家やジャーナリスト、研究者なども含め、会員企業・団体にとって経営(運営)のヒントにつながるような講演会にしていく所存です。「こういう人の講演を聞きたい」「こんなテーマで講演会を開催してほしい」という要望があれば事務局にお寄せください。
定例講演会は時局に応じたタイムリーな話題をお届けできるよう心掛けており、講師や演題は開催1カ月~1カ月半前の案内になりますが、可能な限り、ちらしや政経かながわの裏表紙などで早めに告知してまいります。会場選定にあたっては、これまで通り会員ホテル・ホールを中心としながらも、公立施設なども活用してまいります。
また、会員同士の交流機会の要望に応えるため、12月の会員交流会とは別に懇親の場を設けるよう努力いたします。23年7月の黒岩知事の講演後に行ったと同様に講演後などに企画し、情報交換の場としての機能も強化していく所存です。
▽会報の発行
年間21回発行している会報「政経かながわ」は、2024年3月26日号で通算2207号になります。会報は原則第2、第4火曜日の発行ですが、日本郵政が2年前に配達方針を変更したため、お手元に届くのに2日以上かかってしまうようになりました。誌面は、神奈川新聞社編集局幹部が輪番で執筆する「視点点描」、定例講演会の詳報、地元神奈川の経済ニュースを集めた「かながわTODAY」、県内の景気動向を見る「神奈川景気データファイル」のほか、共同通信社から記事を購入している政治、経済、文化各分野等の旬の情報、身近な話題の「くらし2024」などで構成されています。「かながわTODAY」には会員の皆さまの事業活動などに関するニュースも収容しております。
▽国内視察事業
23年度は、世界最大級の音楽アリーナであるKアリーナの見学会を行うべく進めましたが、独自の企画はできなかったものの、会員を特別内覧会にご招待していただきました。24年度も、県内の今が分かるような、注目される施設の見学会を計画してまいります。
▽公益事業の実施
県民一般を対象にした公益目的事業は、公益目的支出計画が21年度で終了し、実施義務はなくなりましたが、地域経済および地域社会の発展のため、今後も可能な限り実施していきたいと考えております。2023年度は、コロナ禍も沈静化し、感染症法上の分類も5類となったことから、4月の定例講演会で行ったシンポジウム「暖簾をつなぐ」に県民約100人を会場招待しました。24年度も年1回は、県民招待を行ってまいります。
▽その他
2023年10月に始まった適格請求書等保存方式(インボイス制度)に対応し、適格請求書を発行しています。24年には改正電子帳簿保存法に沿い、請求書類の電子データの保存を始めています。また、健康経営にも努めてまいります。
神奈川政経懇話会は、1966年4月19日に神奈川新聞社の一部門として誕生し、ことし58周年を迎え、全国の地方紙に設置されている政経懇話会では最も古い歴史を持ちます。国の公益法人改革を受け、2012年4月、社団法人から一般社団法人に移行。県により課せられた公益目的支出計画は2022年度に完了しました。ただ、当会の定款には目的として「神奈川県の地域経済及び地域社会の発展に寄与」をうたい、事業に「会員及び一般県民を対象とする講演会、研修会を開催する」となっており、公益活動は継続してまいる所存です。