2016年1月講演会「真の福祉国家を実現しよう~知的障害者に導かれた企業経営から~」/日本理化学工業㈱取締役会長・大山 泰弘氏

日 時  2016年1月20日(水) 13時30分~15時00分

場 所  崎陽軒本店 5階「マンダリン」

講 師  日本理化学工業㈱取締役会長  大山 泰弘 氏

 


 

 ▽当社は1937年の創立だが、障害者受け入れは60年から。前年に養護学校の先生が卒業を控えた2人の生徒の就職をお願いに来た。当時は高等部はなく、15歳で中等部を卒業して就職できないと、親元を離れて一生施設に入ることになる。一度は断ったが、先生から「卒業までに働くとはどういうことか、短期間でも体験させてほしい」と頼まれ2週間預かった。従業員から大丈夫と言われて、正式に受け入れた。
 ▽ある法事で住職から、人間の究極の幸せは(1)愛されること(2)褒められること(3)人の役に立つこと(4)人に必要とされること-と教えられた。人間を幸せにするのは福祉施設ではなく企業だとも。チョークメーカーは大きな会社にはなれない。せめて障害者を1人でも多く雇用し頑張れる会社でやる決意をした。
 ▽国の勧めで75年、川崎に日本初の知的障害者多数雇用モデル工場を建設した。現在はチョークの需要が減り、経営への影響が心配される中、川崎市の産学連携助成制度を活用し、粉が出ず窓ガラスに書け、ぬれた布で消せる「キットパス」の製品化に成功した。
 ▽人間の幸せを考えるとき、その気付きをくれたことの一つに、チョークの作り方を学びに来た小学5年男児の言葉がある。お礼の手紙に「天の神様は、役に立つ才能を与えてくださっているのですね。僕ももっと勉強して世の中の役に立つ人になります」と書かれていた。知的障害者の「無言の説法」が、男児の心に響いたのではないか。