日 時 2017年8月31日(木) 午後1時30分~3時
会 場 ホテルモントレ横浜3階「ビクトリア」
講 師 同志社大学大学院ビジネス研究科教授 浜 矩子 氏
▽経済政策には二つの重大な使命がある。第1は経済活動のバランス(均衡)が崩れたとき、復元するために全力を挙げること、第2は弱者救済だ。両者は表裏一体の関係になっている。経済活動のバランスが失われると、深く傷つき追い詰められるのは弱者だ。
▽二つの使命に照らして考えた時、「チーム・アホノミクス」がやっていることは経済政策の判定基準にかなっていない。貧困率が上がることを放置することは許されないし、ゼロ金利・マイナス金利という異様な状態が続き、債券市場は死に体、株式市場も相場が動かず、バランスが崩れている。日本の経済は世界有数だが、子ども6人に1人が貧困状態というゆがみをつくり出した。「アホノミクス」は経済政策としての課題に対応していない。
▽経済政策が政治の思惑や野望に振り回されると、必ずや経済活動から逆襲を受ける。身近な例にヨーロッパのユーロ圏がある。ユーロという単一通貨を誕生せしめた力学が経済政策上の必然ではなく、東西ドイツ統一による強いマルクを封じ込めるために、政治の思惑で経済を動かしたため土台が崩れた。
▽一昨年に安倍首相が訪米した際、「アベノミクスと外交安全保障は表裏一体の関係にある」とスピーチした。経済政策には二つの重大な使命があり、外交安全保障のお先棒を担いでいる暇はないというのが本来の姿だが、安倍首相は強い国家の土台としての強い経済づくりと位置付けている。政治的な下心で経済政策を振り回している。
はま・のりこ 東京都出身。1975年一橋大学経済学部卒業、三菱総合研究所入社。90年4月から98年9月まで同社初代ロンドン駐在員事務所長兼駐在エコノミスト。帰国後、同社経済調査部長、政策経済研究センター主席研究員を経て、2002年同志社大マネージメントスクール教授、04年名称変更により同志社大学大学院ビジネス研究科教授。日本を代表するエコノミスト。専攻はマクロ経済分析。BBC、CNN、NHK、NBC、ブルムバーグTV、ロイター通信等、映像・音声メディアの時事ニュース番組にマクロ経済問題に関するコメンテーターとして多数出演。内外の新聞・雑誌にコラム執筆。TBSテレビの「時事放談」などにも出演している。金融審議会、国税審査会、産業構造審議会特殊貿易措置小委員会等委員、経済産業省独立行政法人評価委員会委員、経済産業省・外務省等関連研究会メンバーなどを歴任。
著 書
「誰も書かなかった 世界経済の真実 地球経済は再び斬り刻まれる」
「『通貨』はこれからどうなるのか」
「中国経済 あやうい本質」
「財政恐慌 ついに金融と財政の死に至る無限ループに突入した」
「EUメルトダウン 欧州発 世界がなくなる日」
「誰が『地球経済』を殺すのか」
「『通貨』を知れば世界が読める」
「1ドル50円時代を生き抜く日本経済」(2011年11月)
「死に至る地球経済」(2010年9月)
「浜 矩子の『新しい経済学』~グローバル市民主義の薦め」(2010年7月)
「ユニクロ型デフレと国家破綻」(2010年6月)
「ユーロが世界経済を消滅させる日」(2010年3月)
「ドル終焉」~グローバル恐慌はドルの最後の舞台となる!(2010年2月)
「2010年日本経済~『二番底』不況へ突入する」((高橋乗宣氏との共著 2009年12月)
「ザ・シティ金融大冒険物語」(2009年8月)
「 2009-2019年 大恐慌 失われる10年」(高橋乗宣氏との共著 2009年4月)
「スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち」(2009年3月)
「グローバル恐慌~金融暴走時代の果てに」(2009年1月)
「超・常識塾 政治・経済編~迷える日本を生き抜くわたしたちのために」(実業之日本社、2003年)
「経済は地球をまわる~エコノミストの見方・考え方」(筑摩書店、2001年)
「ユーロランドの経済学~政治の思惑・通過の力学」(PHP研究所、2001年)
「ネクタイを締めた海賊たち~『元気なイギリス』の謎を解く」(日本経済新聞社、1998年)
「最新EU経済入門~迷走するマーストリヒト後の欧州」(日本評論社、1995年)
「分裂する欧州経済~EU崩壊の構図」(日本経済新聞社、1994年)など。