2018年3月の定例講演会/「ポスト真実」の時代をどう生きるか/政治学者、東大名誉教授・姜 尚中 氏

日 時  2018年3月14日(水) 午後1時30分~3時

会 場  横浜情報文化センター6階「情文ホール」

講 師  政治学者、東大名誉教授  姜 尚中 氏


 東京大学名誉教授の姜尚中(カン・サンジュン)さんが「『ポスト真実』の時代をどう生きるか」と題して講演。「森友問題で安倍内閣の支持率は下落するだろう。挽回には日朝首脳会談の実現しかないと、私なら考える」と話した。
講演要旨は次の通り。
 ▽決裁文書を改ざんした森友問題は、刑事事件として立件するなら変造・偽造になる。メディアの中には書き換えとしているケースもある。現象として起きていることは一つだが、光の当て方で、一方は書き換えと言い、一方は変造・偽造と言う。印象が違う。
 ▽公文書は国家の記録であり、改ざんされると国家の歴史が変わる。われわれは発覚していないものもあるのではと忖度(そんたく)してしまう。不信が連鎖し広がっていけば、国家の土台が壊れる。そうならないよう普段から政治に積極的に関わることが重要だ。
 ▽紙媒体は間違いなく斜陽だが、これほど信頼できるものはないことを、森友問題で改めて知らしめられた。新聞の王道は信頼できる調査と事実を押さえ分析し読者に届ける。当たり前のことで、新聞にしかできない。
 ▽南北の和解と統一は狭いナショナリズムだけでは不可能で、周辺国を巻き込んだ多国間の国際的な問題だ。拉致問題の解決はそのパッケージの中に置くべきだろう。拉致問題だけ取り上げても解決できない。6カ国協議の中で安全保障を確保してから、2国間の問題を解決していかなければならない。

 

かん・さんじゅん 1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。旧西ドイツ、エアランゲン大学に留学の後、国際基督教大学助教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授、聖学院大学学長などを経て、現在東京大学名誉教授、熊本県立劇場館長。専攻は政治学、政治思想史。
『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ』『ナショナリズム』のほか、ミリオンセラーになった『悩む力』をはじめ『心の力』『悪の力』『漱石のことば』など著書多数。ソフトな語り口ながら、透徹した感性と鋭い分析に定評があり、テレビ、雑誌、新聞でも幅広く活躍している。
今年1月に集英社から『維新の影-近代日本一五○年、思索の旅』が刊行される。16年10月の第29回東京国際映画祭では、自らが主演した行定勲監督の「うつくしいひと」が特別上映され、レッドカーペットを歩いた。夏目漱石をこよなく愛す。

著 書

最新刊『維新の影-近代日本一五○年、思索の旅』(集英社)のほか、
『明治維新150年を考える-「本と新聞の大学」講義録』(集英社新書)、
『アジア辺境論 これが日本の生きる道』(共著、集英社新書)
『見抜く力』(毎日新聞出版)『逆境からの仕事学』(NHK出版新書)
『漱石のことば』『悪の力』『心の力』『悩む力』『続・悩む力』(いずれも集英社新書)
など多数。