2018年5月の定例講演会/急変する朝鮮半島情勢 /南北-米朝首脳会談の評価と展望/共同通信社元平壌支局長・磐村 和哉 氏

日 時    2018年5月16日(水) 午後1時30分~3時

会 場    崎陽軒本店4階「ダイナスティー」

講 師    共同通信社元平壌支局長・磐村 和哉 氏


 

共同通信社編集委員兼論説委員で元平壌支局長の磐村和哉さんが「急変する朝鮮半島情勢/南北-米朝首脳会談の評価と展望」と題して講演。「日本は朝鮮半島の未来像ではなく、北朝鮮をどうするかしか見ていない。米中に比べ出遅れている」と指摘した。

講演要旨は次の通り。
 ▽朝鮮半島情勢は同時進行形で急変している。きょう(16日)になって、北朝鮮は(南北閣僚級会談の中止に続き)米朝首脳会談を予定通り行うかどうか再検討しなければならないという談話を出した。特に非核化に関してかなりナーバスになっている。
 ▽今年は南北とも政権樹立、つまり民族分断から70年。文在寅(ムン・ジェイン)大統領、金正恩(キム・ジョンウン)委員長には、こうした負の遺産を解消した政治指導者として歴史に名を残したいという共通点がある。北朝鮮が対話攻勢に転じた理由の一つだろう。
 ▽南北首脳会談は米朝首脳会談の予備的会談とみている。米朝首脳会談の最大の問題は非核化工程表をどうするかだろう。核の凍結・申告までは2008年の6カ国協議のプロセスで経験済みだが、それ以降の査察・監視・核兵器解体と核物質海外移転・核施設廃棄は未知の領域だ。会談成功の布石として北朝鮮は、韓国系米国人3人を特赦したほか、豊渓里(プンゲリ)核実験場を廃棄する。
 ▽日朝間には、拉致問題を解決し、核・ミサイル問題なども解決し国交正常化を目指す「平壌宣言」がある。拉致問題を出口に置くわけにはいかないが、ある程度柔軟にしていく必要があるのではないか。

 

いわむら・かずや 1959年東京生まれ。横浜市内の小・中・高校を経て、84年東京外国語大学朝鮮語学科卒業、同年共同通信社入社、福島支局、横浜支局、社会部、外信部を経て98~2002年ソウル支局、03~11年中国総局(北京)、06~08年平壌支局次長、08~11年平壌支局長、11~12年外信部担当部長、12年~編集委員兼論説委員。
著書などに共訳<2つのコリア>(ドン・オーバードーファー/ロバート・カーリン著・共同通信社・2015年)、2010年~2011年 霞山会月刊誌「東亜」で北朝鮮情勢執筆、「平壌最新ルポ」(韓国月刊誌「月刊中央」2011年4月号・韓国語)、「利害交錯する中朝関係」(「週刊東洋経済」2012年10月6日号)、対談「北朝鮮情勢について」(月刊「公研」2014年2月号)、「同床異夢続く日朝関係」(霞山会月刊誌「東亜」2014年6月号)