2019年2月講演会/経済展望 正念場のアベノミクス~消費増税、トランプリスク、EU危機~/ニッセイ基礎研究所主席研究員/伊藤さゆり 氏

日 時 2019年2月14日(木) 午後1時30分~3時

会 場 崎陽軒本店4階「ダイナスティー」

講 師 ニッセイ基礎研究所主席研究員 伊藤 さゆり 氏


 ニッセイ基礎研究所主席研究員の伊藤さゆりさんが「正念場のアベノミクス~消費増税、トランプリスク、EC危機~」と題して講演。日本経済の見通しについて「拡大は続くが、消費増税や海外要因から下方リスクが高まっている」と話した。
講演要旨は次の通り。

 ▽アベノミクス景気という景気拡大局面は戦後最長記録を更新するだろう。2018年度の実質GDP(国内総生産)の成長率は、自然災害が多かったことや中国経済の急減速から下方修正になるが、19,20年度は、中国の政策対応があれば、日本経済の拡大は続く。ただし、消費増税に加え、米中貿易摩擦などの海外要因から下方リスクが高まっている。
 ▽個人消費が低調なアベノミクス景気で、消費増税はどう影響するか。駆け込み需要の反動で消費が落ち込んだ前回(14年4月)に比べ、「軽減税率導入」「自動車と住宅は大きく動かない」「キャッシュレス決済とポイント還元などの需要喚起」-で影響は小さい。ただ、アベノミクス開始後の所得の伸びは低く、消費の力強い伸びは期待しにくい。
 ▽トランプ米政権は保護主義を鮮明にし、同盟国も追加関税の対象だ。中国とは関税の引き上げ合戦になり、中国経済は減速した。(企業の米国回帰などを狙った)大規模減税も実施したが、下院がねじれ状態で追加の減税は議会と折り合えず、インフラ投資も制約されている。
 ▽英国のEU(欧州連合)離脱は国を分割するイメージ。EUの法律はきめ細かく、離脱するには(英国の法律と)きちっと置き換えないとモノやヒト、データの流れにひずみが生じる。英国はマーケットの5割をEUに依存している。離脱時期は「『合意あり離脱』の法整備のための延長」になる可能性が高い。

 

いとう・さゆり 1987年早稲田大学政治経済学部卒。2005年同大学大学院商学研究科修士課程修了 。日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)を経て、01年ニッセイ基礎研究所に入社。12年より上席研究員、17年7月から現職。 15年度より早稲田大学大学院商学研究科非常勤講師兼務。日本EU学会理事。
主な著書は「英国のEU離脱とEUの未来」(日本評論社、2018年、共著) 、「EU分裂と世界経済危機 イギリス離脱は何をもたらすか」(NHK出版新書、2016年、単著) 、「EUは危機を超えられるか 統合と分裂の相克」(NTT出版、2016年、共著)など。最近のメディア出演等はテレビ東京系列「ニュースモーニングサテライト」、BSフジ「BSフジLIVEプライムニュース」、BSテレビ東京「日経モーニングプラス」、BS11「報道ライブ インサイドOUT、日経CNBC「夜エクスプレス」、ラジオNIKKEI「日経新聞を読んで」など。