日 時 2019年7月29日(月) 午後1時30分~3時
会 場 ホテルモントレ横浜3階「ビクトリア」
講 師 明治大学政治経済学部特任教授、前国立社会保障・人口問題研究所副所長 金子 隆一 氏
明治大学政治経済学部特任教授で、前国立社会保障・人口問題研究所副所長の金子隆一氏が「人口減少社会の実相~日本の課題と挑戦」と題して講演。「国民皆保険皆年金など人口が上り坂でつくった制度が、下り坂で機能するのだろうか」と話した。
講演要旨は次の通り。
▽人口減少や高齢化の最大の原因は少子化だ。だが少子化が解消できても人口減少はすぐには止まらない。人口の変化には出生率や死亡率など政策によって直ちに変えることも可能な行動要因がある一方、年齢構成などの構造要因があり、これは出生率が上昇しても直ちに変えることは難しい。仮に2015年に少子化が解消されていたとしても80年まで減少は止まらない。
▽地方では高齢者の実数は増えていないが、若い人がいなくなり高齢化率(65歳以上)は上昇している。高齢化で悩み苦しんでいた地域は、人口減少という次の局面に入る。神奈川を含む首都圏を中心に大都市では高齢者の実数が増え、介護難民問題が起きる。
▽日本は戦後、働き手が増える人口ボーナス(人口の構造変化で経済に有利な状況になる)で発展を遂げた。しかしながら働き手が老年になり少子化が進んでおり、日本は人口オーナス(人口の構造変化で経済に不利な状況になる)に向かっている。
▽外国から日本に働き手が入ってくるという流れは止めようがないが、それでは少子化や人口減少の問題は全く解決しない。50年後に人口が3割減少する。それを補うため3割の外国人を入れている例はヨーロッパではない。量としての人口は高齢化し減少していくが、長寿化、健康寿命を生かして高齢化像を変え、高度情報化社会に適応したデジタルシニアの広がりなど質の充実が大切だ。
かねこ・りゅういち 専門は人口問題。1956年東京都出身。80年東京大学理学部生物学科卒業、82年同大大学院理学系研究科修士課程修了後、国立社会保障・人口問題研究所に入所。90年米ペンシルベニア大学大学院博士課程修了(人口学Ph.D.)。84-85年米プリンストン大学フェロー、2001-02年米ロックフェラー大学フェロー、06-07年お茶の水女子大学大学院客員教授を経て、12年国立社会保障・人口問題研究所副所長に就任。現在、明治大学政治経済学部特任教授、東京大学経済学部非常勤講師、上智大学非常勤講師。また11-13年アジア人口学会理事、10-13年日本人口学会理事、16-18年日本人口学会会長。
政府委員と最近の主な著書
【政府委員】国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)-社会技術研究開発センター(RISTEX)参与、 同低炭素社会戦略センター(LCS)次期5年間計画評価委員会委員。
【最近の主な著作(編著、分担執筆等)】『新時代からの挑戦状―未知の少親多死社会をどう生きるか―』(厚生労働統計協会、 2018年)、『日本の人口動向とこれからの社会』(国立社会保障・人口問題研究所編、東京大学出版会、17年)、『ポスト人口転換期の日本』(原書房、16年)、『人口減少と日本経済』(日本経済新聞出版社、09年)、『人口減少社会の社会保障制度改革の研究』(中央経済社、08年)など。